2010年3月23日火曜日

ファミレス化した社内ポータル

社内ポータルの利用者(エンドユーザー)の方に話を聞くと、
「うちにはファイルサーバーもあるし、メールもかなり使ってるし、このポータルの位置付けがよく分からない」といった声をよく聞きます。

こういった声の多いポータルは、そもそも提供側である情報システムの担当者も、ポータルと他のシステムの区分けを明確にされていないことがほとんどです。

メールやファイルサーバーと違って、ポータルというのは定義が難しいツールです。
「企業内のさまざまな情報の入口」、というのが基本的な概念であり、社内システムや各種情報へのリンクやナビゲーションを提供するはずなのですが、実際には入口として機能していないものも多々見受けられます。
リンクが大量に並んだサイトを使おうという気にはならないですし、リンクをクリックしたら別ウィンドウでいつものシステムが開くのであれば、いままでのグループウェアやイントラネットと何が違うのでしょう。
しかし、それは何もかも作り手が悪いわけではなく、そもそも企業内にある多くの情報やシステムすべてへの入口を作ることは非常に困難で、企業規模が大きければ大きいほど不可能に近くなっていくものです。

したがって、情報の入口としてポータルを構築しても、現実的には一部の情報を統合する程度にとどまり、利用側は相変わらずさまざまなシステムを用途ごとに使い分け、ポータルの位置付けは不明確なままに運用されていくことになります。
利用者にとっては、ポータルの価値を感じることは難しいでしょう。

社内の多量な情報へのリンクやナビゲーションを集約したポータルは、ファミレスに近いものがあります。
ジャンルの違う情報がポータルというメニューに統合されており、利用者はそこから良いと思うものを探すというスタイルです。
多くの社内ポータルは前述のとおり、ファミレス化しています。

ファミレス化したポータルがすべて悪いわけではありません。
実際に、インターネット上のYahoo!やMSNも、まさにファミレス化したポータルサイトですが、いまだ国内ではトップクラスのアクセス数を維持しています。

しかし、インターネット上のポータルと社内ポータルでは、大きく違う点があります。
それは、利用者がどのような目的でアクセスしているか、です。

社内でポータルにアクセスするとき、大半の利用者は明確に「○○を調べたい、○○の資料が欲しい」という目的を持っています。
いっぽうで、Yahoo!などにアクセスする利用者は、なんとなくアクセスして最新情報やニュース、コミュニティを見る、というように目的が決まっていない利用者が非常に多いです。

目的(食べるもの)が明確に決まっていないときには、ファミレスは便利でしょう。
ですが、目的が決まっている人にとってはどうでしょうか。
ラーメンが食べたいという人は、ファミレスよりラーメン屋を選ぶのではないでしょうか。

社内ポータルも同様です。
あれこもこれも薄く広く提供するより、ポータルに来るとこの情報が得られる、というように用途が決まっていたほうが、利用者側は迷うことなく使えます。
ポータルに限らず情報系のシステムは、かぶっている機能が多いため、使い分けや各ツールの用途を定義することは重要です。

なお、ファミレス化を目指すこと自体はダメではありません。
「何か探したいときにこのポータルに来ると見つかる」ことが実現できれば、それは利用者にとっても明らかにメリットを感じられます。
利用者が目的を持ってサイトに来ていることを踏まえて、適切な画面設計やナビゲーションを提供するだけでも、情報を探す行為を効率化できるでしょう。
その工夫をせず、多様なジャンルの情報をただまとめても、残念ながら利用する価値は低くなってしまいます。

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